第4章
毒と人間

本章では「毒と人間」をテーマに、太古から近現代にわたる「毒」と人間の関わりを考えます。
狩猟や戦、処刑や暗殺、また「毒」を研究することにより薬を生み出すなど、私たち人間は毒と向き合い、その正体や本質に迫りながら、毒を利用する方法を次々と編み出してきました。人間の歴史において、そして人間にとって、毒とはどんな存在だったのでしょうか?さらに、科学の進歩による「毒」の解明、その利用などの「毒」の研究も紹介します。

毒の人類史

先史時代の毒、古代の毒、中世から近世の毒、そして近代の毒

人類が毒をどう扱ってきたのかという歴史は、同時に人類の科学的活動の歴史を示しているとも言える。

パラケルスス
(1493~1541)
スイスの医学者(同時に化学者でもあり、錬金術師でもあった)
「あらゆる物質は毒である。毒になるかクスリになるかは、用量によるのだ」という言葉を残した。

毒を操る

殺虫剤と忌避(きひ)剤

植物が昆虫などの食害から身を守るために合成している毒性物質を私たち人間は、自分たちに都合の悪い害虫を避けたり、殺したりするのに利用してきた。身近な代表的な例は蚊取り線香である。その成分はピレトリンで、昆虫や両生・爬虫類に対する神経毒である。

蚊取り線香の原料となるシロバナムシヨケギク

蚊取り線香の第一号。棒状で持続時間が短かった。