第3章
毒と進化

「毒」の存在は、生物どうしの関係を大きく変えるきっかけとなってきました。
長期にわたるこの影響は、進化として現れます。「毒」が進化の原動力になった例は多数存在します。
「毒」のある生物への擬態や、有毒生物からの「毒」の盗用、「毒」に耐える性質の獲得、「毒」を利用した種子の散布戦略など、
「毒」が招いた多様性と進化の例を紹介し、「毒」と生物の進化の関係を考えます。

警告色

警告色には自身が有毒動物であることを周囲に伝え、その動物と外敵の双方が無用の傷等を負うことを防ぐはたらきがある。

キオビヤドクガエル
黄色と黒の縞または斑紋模様の「警告色」

アカハライモリ
防御姿勢をとるアカハライモリ(腹面の警告色を見せている)

盗用

自身で毒を作れない有毒生物は他者の毒を利用または盗用しているといえる。猛毒生物として知られる多くの生物にも、実は他の有毒生物を食べて毒を蓄積している、つまり他者の毒を盗用しているものも多い。

ムカデミノウミウシ
他の生物の有毒器官(刺胞)を食べて自身の防御に盗用する。

毒に耐える

コアラVS ユーカリ
ユーカリにはタンニンやテルペン、青酸配糖体、フェノール化合物などの毒性をもつ化学物質が多く含まれている。コアラは有毒植物であるユーカリを食物とするため、毒に対抗する様々な特徴を発達させている。肝臓の酵素で解毒をおこなうほか、食物とするユーカリの葉の毒性を味や匂いで敏感に感じ取り、毒性の少ない葉を選別することができると考えられている。